今日は夏越しの大祓。
1年の半分を平穏で過ごせたことに感謝し、残り半年の息災を願う日です。
さて、上蔟から一晩たった蚕部屋を朝のぞくと。。。
5,000頭のなかでも成長が早かった蚕さんたちは、ほぼ自分の部屋を定め、繭作りを始めていました。
一方、そのほかの蚕さんたちは
まだ、〝その時〟がやってきていないのですね。
蔟(まぶし)をうろうろしている姿が散見されます。
養蚕の道具を見ていると本当に機能的なものが多く、舌を巻くこともしばしばですが、
蚕さんたちが繭作りを始める直前にする「大事なこと」のために、蔟の下にセットされたこちら。
黄色い網と、さらにその下のビニールシート。
なんだか分かるでしょうか。
体のなかの不浄なものをすべて外に出してから、長いながい糸を吐くお蚕さま。
うんちとおしっこの受け皿です。
ポタンポタン。ポトッ、コロコロコロ。
上蔟後の蚕部屋では、網とシートにそれらが落ちる音があちこちから聞こえます。
昨晩、その瞬間を撮りたくてややしばらく粘りましたが、ついに叶わず。
眠気に負けて帰宅しました。
なので朝一番の仕事は、排せつ物のお掃除でした。
さらに、蔟から網に落ちてしまった蚕さんたちの救出も。
「どうぞお入りください」と言いながら、1頭ずつに最適物件を案内し、入室してもらいました。
少し体が小さかったり、弱々しい蚕さんたちは、久米さんと里美ちゃんが「カンボジア方式」と呼ぶ床置きの特別室に移されました。
桑の葉をたっぷり置いて、ここで繭を作ってもらうのです。
同じ日に生まれた兄弟たちは繭になっているというのに、まだ葉を食べる蚕さんもチラホラ。
繭作りが始まれば、人ができることはもうありません。
これまで食べた桑で蓄えた力を振り絞り、いい糸を吐いてもらうのを待つのみです。
白くてぷりぷりした5齢の蚕さんに触るのがだいすきでした。
もうその姿には会えません。
文字通り手塩にかけて育てた蚕さんたちが作ってくれる、細く、白く、美しい糸を、今度は紡いで、撚って、染めて、織って、手をかけます。
いのちは終わらない。
〝天の虫〟と書く蚕は、〝草かんむりに糸と虫〟の繭になり、最後は糸に姿を変えて永遠に生き続けます。
(裕)
昨日ずーさまのお知らせが来たので、今日は上蔟と決まっていました。
晴れわたり、爽やかな風の吹く朝。繭になっていただくには、ぴったりの始まりです。
昨日先に一つだけ吊った蔟(まぶし)に入れた蚕さんたちが、光に透ける繭を作り始めていました。
その下には、脱走しそうになっている蚕たち。
「繭になる準備ができているんだよ!」と言っています。
フライングして、蚕ベッドの隅に繭を作りかけた形跡も。
里美さんと久米さんと、組み立てた蔟に蚕たちを移す作業からスタート。
お椀片手に、蚕さんたちを数えて拾う、の繰り返し。
蚕は上にのぼっていく性質があるそうで、区切られた蔟の部屋に入ろうと、もぞもぞ動きまわります。
ちょっと目を離すと、こんなふうに場外に直立していたり
苦しくないのかしら、仰向けになっていたりするのでビックリします。
3頭並んで繭づくりを始めた仲良しさんたちもいました。
こうして5,000頭の蚕をすべて蔟に移したところで、2週間寝ていただいた蚕のベッドは解体。
床もきれいに掃除して、今度はすべての蔟を天井から吊る作業です。
久米さんと里美ちゃん、息を合わせて、7年目の春繭のラストスパートにかかります。
これが終われば、あとはお蚕さまたちに、ただひたすらに糸をつくってもらうだけ。
2週間にわたり毎日、桑を運んでくれた浮船号も、今日で一段落です。
久米さんにピカピカに掃除をしてもらい、車内に香っていた桑の匂いとも一旦おさらば!
無事に5つの蔟が天井から下がり、あっという間に上蔟の1日は終わりました。
まだ部屋が決まらない蚕たちが、もぞもぞもぞもぞ。
蔟が床から目の高さに移動したので観察がしやすくなりました。
繭になる準備が整った飴色の美しい体に、目が釘付けです。
上蔟初体験のわたしは、とにかく足を引っ張らないように緊張しっぱなし。
くたびれました。。。
ほっとして、1日の終わりにはいつもの夕景を。
今日の空は、清々しいのにどこかさびしいブルー。
カエルの大合唱を聞きながら、浮船の里に戻りました。
蚕部屋では一生懸命、お蚕さまたちが繭をつくっています。
かわいらしい、ピーナツみたいな繭が早くも出来ていました。
(裕)
来ました、その時が。
お蚕さまから、「『ずー』になります(なりました)」のお知らせが。
「ず-」とは、繭になる直前の蚕の呼称。
体の色が明らかに変わります。
左がずーさま、右はまだのこ。
飴色になり、ぷりんぷりんに張った体が一回り小さくなるような。
これが〝繭になりますよ〟のお知らせです。
5,000頭のうちずーさまになっているのは、1割にも満ちません。
本格的に上蔟のしつらえにする前に、藁のおうちに移動してもらいました。
ずーさまは、体を大きくのけぞらせます。
そして糸を張る場所を探して、頭を振ります。
こちらは、桑の葉の間に繭を作ろうとしていたずーさまを見つけたので、その場で写したもの。
糸が光に透けて、とてもきれいなのです。
ちょうどずーさまを見つけたとき、小高は朝からの雨が上がり、それはきれいな青空が出ました。
虹を探して外に出たのですが、十分に満足の空。
夜、ふたたび蚕部屋に行くと、さらに数頭のずーさまが見つかりました。
いよいよ明日、蔟(まぶし)を吊して、上蔟の準備です。
今年もいい繭ができますように、今晩は半月によーく願ってから休みます。
そうそう、昼間に探していた虹は、夕方に出ました。
大きなアーチを描き、小高の空を包んでくれました。
(裕)
5日ぶりの太陽がでました。
ひと刷毛したような色合いですが、それでもうれしい青空です。
浮船の里の蚕部屋では、五月雨が降っていました。
もとい、目を閉じると、五月雨かと思うような蚕の食事の音が静かに広がっています。
さわさわ、さわさわ。
桑を歯で噛む音なのか、体と桑が触れ合う音なのか。
5齢も後半にさしかかり、真上から見ると背脈管がくっきりと見えるようになりました。
体の中心を通る管が、写真で伝わるでしょうか。
尾部から頭部に体液を送っているそうです。
この脈打つリズムが早いと元気な証拠、と教わりました。
ドクドク、ドクドク。
いのちの鼓動。
今日はお掃除の途中で、こんな色のお蚕さんを見つけました。
下が一般的な色です。なめらかな白色。
脱皮ができなかったのかなぁ、と久米さん。
無事に繭になれるかどうか、特別室で見守ることになりました。
1日の終わりには、久しぶりの夕焼け。
小高川の土手を歩いていると、夏の匂いがしました。
かつて山小屋で暮らしていたときに、山で香った、夏の匂い。
ふと、記憶を刺激される、6月最後の土曜日です。
(裕)
しばらく青空が出ない小高。
曇天のもとだと、桑畑の緑がいっそう鮮やかです。
が、やっぱり青い空も見たいなぁ。
毎朝桑刈りに出かけて最初にすることは、前日お掃除した桑の枝や蚕のふんを捨てること。
場所が決まっています。
昨日はそこで2頭、何日か前に捨てた桑の中からお蚕さまが出てきました。
(健気にも、自分で地上に出てくるので発見できるのです。。。)
今日も1頭、極小の蚕ちゃんが見つかりました。
まるで小枝のようで、でも土の茶色に白が浮き上がっていて、目に止まりました。
というよりも、目が点。
体長が3センチほどのところをみると、どうやら畑に4、5日いた計算になります。
こういうときは誠心誠意、謝るしかない。
ごめんね。
声に出して、謝りました。
そして、今日捨てたばかりの桑からも1頭。
こちらは大きかったので、おそらく昨日のお掃除の時に紛れたものかと思います。
すくい上げた2頭を並べて再度、謝罪。
「いいよ」と言ってくれたかのように、大きな蚕さんがこちらを見上げました(都合のいい解釈)。
浮船の里に戻り、上蔟の準備です。
蔟(まぶし)と呼ばれる、蚕が1頭ずつ繭を作るための部屋を掃除。
去年の秋繭養蚕時に使って以来の登場なので、残っている糸やふんを、ブラシと歯ブラシで取り除きます。
普段はおおざっぱな性格なのに、こういうときだけはなぜか徹底的にきれいにしたくなる性分。
久米さんが10個以上仕上げる間に、わたしが手を付けたのはたったの3個。
ちなみに、1つの蔟にはこれだけの糸が残っていました。
柔らかで軽くて、ふわっふわ。
このかわいらしい姿を見ていられるのも、あと2,3日くらいです。
(裕)