いとしのお蚕(こ)さま

2019年6月15日

梅雨の小高。15日(土)は朝から本降りの雨です。

今年最初のお蚕さまは5,000頭。5齢といって、人間でいうと高校生くらいの食欲旺盛な時期にさしかかっています。

新鮮な桑を食べてもらおうと、朝一番の仕事は桑切りから。桑畑を貸してくださっている佐藤さんご夫妻と久米さんと4人で30分ほど、あすの天気も鑑みて10束分をたっぷり切り、急いで浮船に戻ります。一晩分のふんと枝だけになった桑を取り除き、水気を払った桑を「さあ、食べて!」と気前よく広げると―。

しばしののち緑一面の桑の下から、白い体をうねうねさせて、お蚕さまが顔を覗かせます。耳をすませばさわさわ、さわさわと五月雨のような、桑を食む音。これこれ、この音がわたしの6月です。

浮船を訪れるようになって今年で5年目。最初の年は、触ることもできませんでした。今ではひとり、蚕部屋で飽きずにシャッターを切ること100枚以上。とにかくいとおしくて仕方のない存在です。久米さんも毎日お世話をしながら、話しかけているそう。

ところでお蚕さまは、地方によって「お蚕(こ)さま」と呼ぶ場所もあるそうです。響きがかわいらしく、ただただ無心で(おそらく)桑を食むその姿にぴったりの、やさしい呼び名だと思います。(ゆ)