7月10日、今朝の小高には輝くような太陽が昇りました。
上族から10日が経ち、今日は繭かきです。
繭かきとは、蔟(まぶし)いっぱいにできあがった繭を「掻いて」取り出す作業。
5つの蔟すべてを蚕部屋の天井から下ろし、まずは久米さんとわたしでチェック。
光に透かして、薄い繭や弱い繭、お蚕さまが中で力尽きてしまっている繭などを見つけて、取り除きます。
(これを怠ると、あとで大変なことになります)
繭かきは、桑畑を貸してくださっている佐藤公一さん、ヨシ子さんご夫妻のお宅の元蚕部屋で行いました。
ここには秘密兵器が!
秘密兵器を使う前に、もう一度光でチェック。里美ちゃんの目は真剣です。
公一さんと、2人の目で見ると、まだ取り除かなければいけない繭がありました。
チェックが終わった蔟(まぶし)を、マユクリンという機械に通します。
突起がついたローラーが回転し、蔟の一つひとつの四角を柔らかく押し出すようなかたちで繭を取り出せる、優れもの。
ローラーに絡みつくふわっふわの糸は、まるで羊毛のよう。
そしてその手触りはどこまでもやさしく、持つとこのうえなく軽いです。
マユクリンからはポンポンポンポン繭が飛び出てきて、あっという間に山が出来ました。
光のチェックを怠ると、薄くて弱い繭が機械を通った時に中の蛹が機械で潰されて、せっかくの糸が台無しになってしまいます。
逆に言えばそれほどに、お蚕さまががんばって作った繭はしっかり丈夫です。
繭かきは40分ほどで終了。
おかあさんが育てたきゅうりの特製浅漬けとみかん、南相馬銘菓の流山まんじゅうでお茶の時間です。
わたしはこの時間が本当にだいすき。
世間話やら、今回の養蚕のちょっとした感想など、和やかなひとときです。
わたしはきゅうりに夢中で、おかあさんが出してくださったお皿いっぱいのお漬物、全部たいらげました(そしてお土産分も頂戴する始末)。
さて、浮船の里に戻ると最後の作業です。
できあがった繭を糸として使うための下準備。
まずは、繭を覆う薄い膜のような糸をはがし、
100個ずつポリ袋に入れます。
夥しい数の繭の中には、個性が際立つものがちらほら。
同じ日にうまれて、同じように桑を食べて育ったお蚕さまたち。
小さな繭、ピーナツみたいにくぼみができた繭、真四角の繭、先がとんがった繭、珊瑚のカケラのようなちょっと変わった形の繭。
ピンポン玉より少しちいさいくらいのものは、2頭で営繭した「親繭」というそうです。
かわいらしいハート型の繭、初めて見ました。
蔟で営繭してくれたお蚕さま4,700頭、カンボジア方式で営繭してくれたお蚕さま376頭。
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カンボジア方式とは、これですね。
いつまでもウロウロして蔟のお部屋に入らなかった蚕さんたちは、桑の枝の集合マンションで、マイペースに営繭してもらいました。
2020年の春繭は、ぜんぶで5,076個。
5,000頭買ってきたのですがまぁ、そこは問題なし。
塊でありながらすでに鈍い光沢を放っている繭を見ると、すなおに「ありがとう」という言葉がわいてきます。
大きいも小さいも、それは個性。
こもった繭のその中で、使命を終えたお蚕さまたちはなにを思っていたのだろう(過去形なのは、すでにこれを書いているいま、繭は冷凍されているため)。
わたしたちは秋までちょっと、一休みです。
(裕)