いつ見ても不思議。

2017年9月25日

9月18日、上蔟の日です。

繭を作る準備が整ったお蚕様を熟蚕(じゅくさん)と言います。この時の様子をあらわす言葉が地方によって様々なのですが、小高周辺では、お蚕様が「ひける」と言っています。

なぜ「ひける」なのかいまだによく分からないのですが、養蚕に携わった大先輩方は皆同じように話します。

今日、繭を作るための部屋「蔟・まぶし」に入ったのは早い組の約2500頭。前日の夜のうちに5~6頭だけ蚕座の中で繭を作っていましたが、昼夜の明るさが分かるので基本的に夜は繭づくりを始めません。その代わり、繭づくりが始まると一心不乱に糸を吐き続け、3~4日で作りあげてしまいます。

体が透けて見えるくらいにしっかり熟したお蚕様は、蔟に入った後少しの間歩き回ります。気に入った場所が見つかると、何かを決心したかのように繭の足場になる糸を吐き始め、自分の周りに糸を張り巡らせ、何度も何度も糸を重ねて繭を形作ります。

懸命な姿が見えるのは2日くらいまで。3日目からは、耳を傾ければ頑張っているのが聞こえてきます。

あんなに細くてかよわい糸も、重ねれば姿を隠せるくらいの厚みにできる。

本当に不思議で、神秘的で、うつくしい。

小さなことを積み重ねる、「生きること」の見本のような姿にハッとさせられます。

上蔟・営繭のあとは10日後くらいを目安に、繭の収穫「繭かき」です。