2016年7月12日(火)―。南相馬市小高区は、高線量の一部地域を除き、避難指示が解除されました。
わたしは小高区の住民ではありません。けれどこの日を小高で迎えたかった。すでに避難指示が解除された12日の午前0時を過ぎてから小高に入りました。街はいつもと同じようにとても静か。まだ眠っていました。
太陽が昇り、午前7時。小高駅前に向かうと国・県・市・区の職員やJR常磐線の駅員に消防団、そして多くの報道陣が集まっていました。7時30分、原ノ町を5年4か月ぶりに発車した下り電車が、野馬追の旗指物はためく小高駅のホームに滑り込んできました。
そしてわずかな乗客を乗せ、電車は原ノ町に向かって折り返してゆきます。駅前では式典が始まっていました。
「避難指示が解除になった今日がゴールではなく、今日はスタートの日です」。こうあいさつをする人がいました。
ゴールとは、スタートとは。さまざまな人が、さまざまな思いを抱え、その場にいたのではないでしょうか。
あすなろ交流広場に戻ると、久米さんがあげたこいのぼりが、風に乗って自由に泳いでいました。天気は快晴。青空に、映えます。
この日も、浮船の里はいつもどおりでした。7月1日にあすなろ交流広場にやって来たいとしいお蚕さまたちは、5齢を迎え、食欲旺盛。もりもり、もりもり桑の葉を食べます。一生懸命に。
久米さんも里美さんも愛子さんも、糸を紡ぎ、織り、お蚕さまのお世話をし、日常を生きていました。
これからも、浮船の里ではこんな時間を過ごしてゆくのだと思います。みなで集い、語り、笑い、時には泣き、その時間をともにしながら、日常を過ごしてゆくのです。
お蚕さまが中心にいて、それに魅せられた人たちが集う浮船の里は、これまでと変わらず、ここを訪れる人を迎えてくれると思います。 (裕)
7/2(土)、3(日)、お蚕様と久米さん、里美さんに会いに浮船の里へ行ってきました。
何度も通っているけれどいつもタイミングを合わせられなくて、実際にお蚕様をみたことはありませんでした。
だから小高までの道中はドキドキワクワク。
初めて入るお蚕様の部屋。
2(土)に着いたときはちょうど3齢の眠に入っていて、
外からのぞくとみんな動かずにじっとしていました。
でもドアを開けて中に入ると、気配を感じるのかゆらゆらしだしました。
一匹がゆらゆらするとその近くにいる蚕も動き出して、その様子がかわいくてかわいくて。
虫なんだけど、なんか人間っぽい。
人は誰かとずっと一緒にいると、お互い似てくるというけれど、
お蚕様と人間の関係もそうなのかもしれないなぁ、と
まだ小さい蚕を眺めながらぼんやり思いました。
3(日)は、眠から覚めて脱皮も済んで動き回っていました。
たった一日なのに確実に昨日より大きくなっていて、その成長スピードには驚かされます。
11時半に、茎から取った桑の葉をネットをかぶせた上にばさっと投入。(桑かけと言うらしい)
すると勢いよく葉に登り、思い思いに食べ始めました。
端っこが好みの子がいたり、食べながら穴を開けてみたり。
葉を食べる音が桑の匂いと一緒に部屋に広がって、そこだけ別世界になったような、不思議な気持ちになりました。
↑ 3齢と4齢の蚕。大きさの比較です。
成長スピードにも個性がありました。
今必死に桑の葉を食べて大きく育っているお蚕様たちの命をいただいて、絹が手に入ります。
今回実際に接することで、その尊さというか、儚さのようなものを感じました。
今回のお蚕様たちが繭をつくるのは、7/15.16日頃とのこと。
そのときにまた会えるといいな。会いにこようかな。
(ひさえ)
2016年も折り返しに入りました。晴天の小高7月1日、今年2回目のお蚕さま飼育が始まります。
久米さんと里美さんと一緒に、田村市都路地区にある「持藤田(もっとうだ)稚蚕飼育所」に3齢(小学生くらい)の錦秋×鐘和2000頭を買いにゆきました。
ゲート、開きました。もちろん誰もいない。時おり、トラックや乗用車とすれ違います。くねくね山道を進むこと、しばし。山から桑を背負って降りてきた男性に迎え入れられました。
ここが稚蚕飼育所。中はもわっと暖かく、静寂に包まれています。2000頭の蚕と言っても、一人が2㎝ほど。新聞紙を広げたくらいの大きさに、みっちり。
すでに3齢から眠りに入っているお蚕さまたちもあり、今回は養蚕歴50年の菅野勉さん(74)にいろいろなことを教えてもらいました。
この道50年ですから。菅野さんはこちらが素人まるだしの疑問をぶつけても、淡々と答えてくれます。聞けば初めてのことばかり、とっても勉強になりました。例えば、眠りに入るお蚕さまは頭のあたりがうすいオレンジとも赤ともつかないような色になる、とかとか。
こんな青空のもと、里美ちゃんと久米さんは一生懸命お蚕さまの話を聞いています。わたしはぶらぶら。
風が気持ちよい一日でした。無事にお蚕さまも迎えに行けて、途中寄り道しておいしいアイスを食べた久米さんはご満悦(笑)の様子を、サイドミラー越しに撮影してみたり。
無事に帰りの検問も通り、いつもの小高に帰ってきました。これから上蔟まで約2週間。浮船の里に来ると、かわいいやつらが迎えてくれますよ。