ありがとう

2022年6月30日

中4日開けて、小高に戻ってきました。

火曜の昼ごろ、久米さんから連絡がありました。
「始まったよー!」
あぁ、間に合わなかった。火曜の深夜に、小高に着く予定でした。
上蔟(じょうぞく)の作業を手伝いたかったのです。

成熟したお蚕さんは、「繭になりますよー」というサインを出してくれます。
真っ白でむちむちしていた体を飴色に変え、ほんの少し縮みます。久米さん曰く「ぷりっとした感じが減る」という状態です。
体を弓なりにし、頭をふりふりし始めるのが、そのサインです。

サインが来たら、準備した蔟(まぶし)にお蚕さんを移して繭づくりをはじめてもらわねば。
ここはもう、人間の都合は関係なく、蚕のタイミングに合わせるのみです。

水曜の朝、蚕小屋を開けると天井から蔟4枚が吊られていました。

きれい。
形のいい、美しい繭が整然と並んでいました。

すこし成長がゆっくり目の蚕さんたちの蔟では、まだたくさんうろうろしている子がいます。
体の色は変わっているので、〝そのとき〟はきっともうすぐ。

桑の葉でタワーを作る養蚕方法の「カンボジア方式」蚕ベッドでも、ちらほらと糸を吐いている蚕さんが見られました。

こんなに細いのにはっきりと光沢が分かる糸が、口からスーッと伸びるさまは、いくら眺めても飽きることはありません。

蚕ベッドを解体し、桑畑をお借りしている佐藤さんご夫妻に上蔟の報告に行きました。
ふと、数日前に捨てた桑の枝の束に目をやると、、、

 

健気(泣)
お掃除のときに桑と一緒に外の世界へ運ばれた蚕さん、野生でしっかり営繭していました。
ごめんねぇ、気づかなくて。
でもたくましいですよね。ちゃんと繭になってくれた。
浮船の里へ連れて帰りました。

やっと一息ついたころ、小高を包んだ夕景の、すばらしかったこと。

この雄大な空を見ていると、心が凪いでいきます。
今日という日が無事に終わった。
お蚕さんたちの旅も順調に進んでいる。
ありがとう。

誰にだろう、お礼を言いたくなるのです。(ゆ)