後ろ髪

2022年7月1日

蚕さんたちが一生懸命に糸を吐いている木曜の朝は、美しい朝焼けでした。夢の中にいるひとも、起きて写真を撮っているひとも、まだ桑を食べている蚕さんも、もう真っ白い繭を作り上げた蚕さんも。みんなを等しく包み込む、小高の朝です。

 

蚕部屋も朝から30度近い熱気に包まれるなか、毎年恒例の光景が。

蔟から遠く離れた床で営繭。
蔟は蚕の重さで回転するので、もしかしたら振り落とされてそのままここで繭づくりに踏み切ったのかもしれません。

 

個室の外で営繭。
快適(はなず)な個室完備なのですが、型にはまりたくない蚕さんたちが集まったのかしら。
この場所だけが混んでいるので、なにか魅力があったのかな。

ほぼお部屋に入ったお蚕さんたちですが、まだ桑を食べているマイペース組もいます。

いいよ、いいよ。好きにやって。
最後には繭になるもんね。
思わずそんな言葉をかけたくなる姿。
蚕部屋に満ちる、糸を吐きだすショワショワショワショワという音も、あと2,3日で静かになるでしょう。

 

火曜から始まった繭づくり。
個体差があるので、2日遅れでスタートした蚕たちは、まだ薄い衣ごしにその姿を見ることができます。

 

帰れないんだよなぁ。。。
いつまででも見ていられる、営繭の様子。
今年もお蚕さんたちに会えてよかった。
桑畑の佐藤さんご夫妻のお元気そうなお顔を見られてよかった。
後ろ髪ひかれながら、そろそろエンジンをかける時間になりました。

 

(ゆ)

 

ありがとう

2022年6月30日

中4日開けて、小高に戻ってきました。

火曜の昼ごろ、久米さんから連絡がありました。
「始まったよー!」
あぁ、間に合わなかった。火曜の深夜に、小高に着く予定でした。
上蔟(じょうぞく)の作業を手伝いたかったのです。

成熟したお蚕さんは、「繭になりますよー」というサインを出してくれます。
真っ白でむちむちしていた体を飴色に変え、ほんの少し縮みます。久米さん曰く「ぷりっとした感じが減る」という状態です。
体を弓なりにし、頭をふりふりし始めるのが、そのサインです。

サインが来たら、準備した蔟(まぶし)にお蚕さんを移して繭づくりをはじめてもらわねば。
ここはもう、人間の都合は関係なく、蚕のタイミングに合わせるのみです。

水曜の朝、蚕小屋を開けると天井から蔟4枚が吊られていました。

きれい。
形のいい、美しい繭が整然と並んでいました。

すこし成長がゆっくり目の蚕さんたちの蔟では、まだたくさんうろうろしている子がいます。
体の色は変わっているので、〝そのとき〟はきっともうすぐ。

桑の葉でタワーを作る養蚕方法の「カンボジア方式」蚕ベッドでも、ちらほらと糸を吐いている蚕さんが見られました。

こんなに細いのにはっきりと光沢が分かる糸が、口からスーッと伸びるさまは、いくら眺めても飽きることはありません。

蚕ベッドを解体し、桑畑をお借りしている佐藤さんご夫妻に上蔟の報告に行きました。
ふと、数日前に捨てた桑の枝の束に目をやると、、、

 

健気(泣)
お掃除のときに桑と一緒に外の世界へ運ばれた蚕さん、野生でしっかり営繭していました。
ごめんねぇ、気づかなくて。
でもたくましいですよね。ちゃんと繭になってくれた。
浮船の里へ連れて帰りました。

やっと一息ついたころ、小高を包んだ夕景の、すばらしかったこと。

この雄大な空を見ていると、心が凪いでいきます。
今日という日が無事に終わった。
お蚕さんたちの旅も順調に進んでいる。
ありがとう。

誰にだろう、お礼を言いたくなるのです。(ゆ)

 

ショーマストゴーオン

2022年6月25日

久米さんのFacebookを見ている方はもうご存知ですね。
梅雨空の小高・浮船の里に、今年もお蚕さまがやってきました。

例年の倍の数がやってきて奔走(と疲弊)した昨年の教訓を生かし、今年はちゃんといつも通り。
5,000頭です。

6月17日にお迎えしてから6日目にあたる22日、2022年春の蚕さんたちと対面しました。

「ちっちゃい」。


チョコレート菓子の小枝のチョコを、もう少したっぷりつけたくらい。

8年目のお手伝いになりますが、なにもかも毎年新鮮で、作業をしながらいろいろ思い出します。
お掃除の手順、桑の切り方、蚕さんたちの習性。

朝たっぷりあげた桑の葉を

きれいに食べ尽くしてくれるとうれしい!というのは毎年おんなじ。
1日のうちで、朝と夕方でさえもサイズが違う。
蚕の成長は目を見張るものがあります。

 

そうそう、去年から浮船の里の蚕小屋は一戸建てにお引っ越ししました。
冷暖房完備、5,000頭をお世話するのにはちょうどいい3畳ほどの広さです。
お蚕さんたちの適正温度は25度。
常時このくらい暖かくないと、活発に活動(桑を食む)をしてくれません。

梅雨時の小高、朝の気温は20度くらいでとっても快適。
蚕小屋の暖房をつけると暑いな、と思うのですが寒がりの久米さんは「ここがちょうどいいわぁ」とニコニコしています。

過ごしやすいとはいえ、朝5時起きの桑刈りが始まり、すでに1週間。
たったの2、3日しかお手伝いしないわたしでも寝不足でぼんやりするので、久米さんはいかばかりか。
いまのところ、元気です。

カメラを向ければ、ほら。

大事なことを忘れていました。
このブログのタイトル「ショーマストゴーオン」。
浮船の里の、養蚕の、どの場面でこんな言葉が出てくるのか、と思いませんか。

蚕部屋に、久米さん愛用の携帯音楽プレーヤーが置いてあります。
その日の気分で、島津亜矢やアヴリル・ラヴィーンのアルバムが流れてくるのですが、着いた日の夜の楽曲がQueenの「ショーマストゴーオン」でした。
タイトルが、まさに養蚕を表しているなと思ったのです。
蚕がやって来たら、あとはもう繭になるまでひたすら桑をあげて育ってもらう。
始まれば、もう前に進むしかないのです。

ものごとなんでもそうでしょうけれど、不意に流れてきたこの曲は、とても胸にささりました。
この週末、蚕さんたちの食欲は最盛期に入ります。
小高から小田原に帰ってきた途端、うんざりするほどの暑さと湿気に萎えていますが、今日からは小高も気温が上がる予報。

どうかバテずに、上蔟までたどりつけますように。(ゆ)

緑滴る小高と小田原

2022年5月28日

お久しぶりの投稿です。

日ごとに緑の色が変わっていく5月も、もうすぐ終わり。
梅の収穫が最盛期を迎えている小田原から、小高に来ました。

今年のお蚕さまを迎える準備が進む佐藤さんご夫妻の桑畑の横に、藍を植える作業を行いました。

まずはおかあさんから、植え方のレクチャー。

久米家のサンルームで大切に育てられた藍を、定間隔に開けた穴に2株ずつ埋めてゆきます。

 

今年の藍もよく育ちますように。
願いを込めて、土をかぶせます。

4月中旬に種まきをした藍、今年は発芽率がよかったのでもう一畝。
おとうさんをお手本に久米さんも一生懸命に鍬をふるい、すべての藍の苗を植えました。

たっぷり水をあげ、おかあさんが肥料をまいてくれたら作業は完了。
すっきりと晴れた5月の空が本当にきれいで、涼しい風が気持ちよく頬を撫でていきます。

 

春のお蚕さまは、6月17日から始まることになりました。
桑の成長具合は、このような感じです。

あと半月、雨の恵みを受けながらお日さまを浴びて、おいしい葉っぱに育ってもらいましょう。

おかあさん曰く、桑の新芽(写真でいうと、先端の若い芽)は天ぷらにして食べるとおいしいそうです。
お蚕さまでなくとも、のどがゴクリ、と鳴りそうな。

藍を植え終わったあとは、おいしいコーヒーが飲める香音さんへ一服しに。
こーんなに分厚いトーストを、ぺろりといただいてしまいました。

 

 

収穫時期にあわせて、毎年久米さんにお届けしている小田原の梅。
梅酒に梅干しに、さまざま楽しんでもらっています。
かねてより念願の梅もぎを、今年ついに小田原で体験した久米さんの輝くような笑顔の写真を、最後にご紹介します。

生産者さんが丹精込めた農作物をこんなに喜んで収穫してもらえるのは、産地に住む者としてとてもうれしいこと。
われながら、いい写真が撮れたなぁ!

爽やかな緑の季節が、過ぎてゆきます。(ゆ)

小高の春

2022年4月18日

コロナウイルスの感染流行が始まってから2年間見に来られなかった小高の桜。

 

今年は楽しみにしていました。

福島市で開花宣言が出ても、浜通りは「まだだね」と久米さん。

しつこく咲き具合を聞くもので、小高川の土手の桜並木の写真を毎日送ってくれるようになりました。

先週日曜日まではただの枝のように見えていた桜の木、翌11日の月曜日に「満開だよ~! 春だ。春だよ~!!」とのメッセージとともに、薄紅の衣をまとった姿が目に飛び込んできたときの驚きと言ったら。
こんなに急に開くものなんだ。。。
びっくりしました。

さて、都合上、どうしても週末しか行けない。
折りしも週末は台風予報。

うーん、悩ましいけど仕方ない。
散らないで、散らないで、と気を揉みながら過ごしていました。

3年ぶりの小高の桜。
鶯が鳴き、雉のつがいが田んぼをのどかに散歩する、小高の春です。

 

小高神社には花びらのじゅうたんができていました。
先月末の桑畑の手入れから始まった今年のお蚕さまの準備。
今回は藍の種を植えました。

去年とったあと乾燥させておいた種を前日から水に浸し、お昼から作業開始。

3センチ四方ほどに小さく仕切られたプラスティックケースに土を入れ

 

箸で、「5粒くらいね」種をつまみ、指で開けた穴の位置に落とす。
ただこれだけなのですが、やれ「少ない!」「穴にちゃんと入ってない!」。
久米監督、なかなか厳しいのです。

(明らかに)5粒以上の種を無事にすべてのスペースに落とし、土をふんわりかぶせて水を回しかけ、藍の種まきは終了しました。

通常2週間くらいで発芽するそうですが、うまくいくときもあればそうでないときもあるらしく、「気ぃ揉むんだよ~」。

お日さまがたっぷり入る久米家のサンルームに移動して、あとは毎日観察です。

ふと見ると、庭の隅っこにぴょこぴょこと茶色い物体。

何年ぶりに触っただろう。ツチガエルかな。

「そんなもの触って~!」信じられないといった目で見てくる久米さん。「かわいいじゃない」と言ったら「虫、大嫌いなのよ」。

これ虫じゃないんですけど。
つぶらな瞳でかわいいのにね。

再びお会いすることがないように、隅の隅に放しました。

 

霜注意報が出た4月中旬の小高、ここから先は温かい日が続くようです。
次はいつ来られるかな。
藍の成長を願います。(裕)