きょうからはじまる物語

2015年12月13日

師走の週末、小高はぐっと寒くなりました。

震災後、小高と小田原の間に生まれたご縁から、小高駅前の双葉屋旅館に木のテーブルがやってくることになりました。テーブルの一部分には、立派な「欄間」が使われています。この欄間、もとは旅館のまえの新開釣り具店さんにあったもの。建て替えのための取り壊しのとき、双葉屋の女将・友子さんがたまたま目にして、「なにかに使いたい」と残したそうです。

さあ、この欄間をどうするか―。女将は思案しました。営業を再開する予定の旅館の食堂に、センターテーブルがない。欄間をテーブルに使えないだろうか。ご主人と一緒に設計図をおこしました。制作を依頼したのは、以前から浮船の里とも交流がある、小田原林青会さん。木材業に携わる団体の若手集団です。
12月12日、卓の真ん中に欄間が入ったテーブルを小田原の人たちが直に届けに来ました。相馬の魚を囲み、総勢30人近くで新旧の交友を温める宴を開催。一晩あけて翌朝、もうテーブルは日常の一部になっていました。パンやコーヒーが並び、テーブルを囲んで朝ごはん。さフツーに、生活の一部に入りました。朝ご飯の途中で、女将がポツリ。「あたし幸せだよな」。こうして人を迎えられて、食卓を囲めるのが〝普通に〟できること。「いままでできなかったもん」。
改めて、テーブルを制作した木工屋さんとプロジェクト長からごあいさつ。旅館のご主人が返した「ここには物語が流れている」という言葉に、その場にいたみんなが頷きました。木を介して生まれたつながりと積み重ねてきた日々。そしてまた始まる未来。
小田原産の杉とヒノキが使われたテーブルは、寄木のしつらえです。使えば使うほど、木の色が変化していくとのこと。双葉屋旅館さんの再出発と同時に、テーブルにいのちが吹き込まれました。テーブル小田原の皆さんが出発したあと、欄間の持ち主の新開さん夫妻と女将夫妻で、早くも井戸端会議が始まっていましたよ。

団らん