気持ちよい青空の広がる小高、11月28日(土)。
午後から、糸つむぎのワークショップが開かれました。本日の参加者は、全国各地から福島県に応援で来ている警察官の男性5人。始まる前は、どんな雰囲気かと思っていたのですが…
意外にも、お蚕さまや繭、織り物に興味津々!その様子を見ているこちらも、ワクワクします。あすなろ交流館を包むあたたかい冬の日差しを受けながら、糸つむぎ開始。
三者三様、これが実に面白いのです。
やさしい色の茜を選んだ「京都」さん(派遣元の都道府県名で呼ばせていただきます)、久米さんを上手に頼って糸を紡いだ「大阪」さん、おしゃべりせずに黙々と細―い糸を紡ぎあげた「千葉」さん、真綿をほぐすのは苦戦したものの紡ぎはじめたらリズムに乗った「東京」さん、指先をふのりでふやかしながらも味のある糸を紡ぎあげた「福岡」さん、とても楽しそうでした。
夢中で手を動かし続けて開始から2時間半、全員が糸を紡ぎ終えました。そして紡ぎ終わると笑顔でした。こちらが紡ぎ終えた糸。
来月はいよいよ「織り」です。どんな様子になるのか、気になります。
ワークショップはどなたでも参加できます。興味がある方、ぜひいらしてください。
2ヶ月ぶりにお邪魔しました。
私が小高に行くとどうしても雨が降るようです。
紅葉前線が各地を通過していて、
きれいな景色を楽しめるきょうこの頃。
この木々が葉を落とすころには、
「もう冬になるんだなぁ」と思うと、少し寂しい気もします。
浮船の里で行われている「染め」の作業は、
そんな人間の気持ちに対する知恵なのかもしれません。
浮船の里には、たくさんの葉があります。
小高小学校のもみじ、小高神社の桜の葉・・・。
どれも小高の秋を彩っていたものたちです。
それぞれに思い出があり、記憶があります。
その葉から声を聞いて、引き出し、「永遠のいのち」を与えられた絹に、
それぞれのストーリーを布にとどめていくのが「染め」の作業なのでしょう。
「一度目の染液よりも、二度目の方がきれいになる」
「アクがあるから植物の本当の色は後から出る」そうです。
このほかにも「桜の落ち葉はピンクに染まる」ことにも驚きました。
奥深いですねえ。
普段私たちが見ている紅葉もきれいですが、
それは草木のほんの一面にすぎないんですね。
縦糸と横糸があって、布になり、そこに物語が染まっていく。
決して同じものはなく、ひとつひとつが美しい。
ああ、何か一枚の織物から大切なものをたくさん学んだような気がします。
脱色されたもみじたちも、どこか誇らしげに見えます。
ありがとうございました!
(きだ)
雨の土曜日11月14日、秋まつり以来ひさしぶりに訪れた小高は、朝晩めっきり寒くなっていました。
蚕部長の永木賢二郎さんが、秋のお蚕さまがひと段落してからほぼ毎日、繭から糸をとる「座繰り」をしていると聞き、初めて見せてもらいました。
まず、久米さんがいつも笑顔で言うところの「煮る」作業(あんなに可愛がって育てたのに…煮ちゃうんだ…なんていう私情は挟んではいけません)。100個ほどの繭を20分浸水し、沸騰したお湯の火を落とし、2分30秒。この時間が非常に大事!
煮た繭を、糸取り器にセット。単位は分かりませんがとにかく細い(としか言いようがない)1本の糸口が、鍋の中でクルクルと踊る繭の中から何十本も吸い上げられて、1本の太い(と言っても細い)糸になり始めます。写真をよーく見てください。クモの糸のような、雨のような細い糸が繭から出ているのが見えるでしょうか。
糸取り器をはじめ、座繰りに使う道具はすべて永木さんのお手製。
コタツのスイッチあり、〝円周率を計算した〟歯車あり、と日常のさまざまな部品を使って、実に精巧に作られた道具たちに、感嘆のため息がもれました。
約100個の繭からは1.2キロメートルほどの糸がとれるそうです。糸巻きにまかれた絹糸。精練するとより光沢が増すのですが、この時点でも美しい。
9月の末に繭かきをした時には触れなかったさなぎちゃん(見た目が…あんなに可愛かった蚕と違うもので)ですが、繭から出てきた姿を見たら、自然と「ありがとうね」と言いたくなりました。
織姫の里美さんは「丈夫な糸をはき出す蚕から、永遠のいのちをいただく」と言います。一連の作業を見ていると、その言葉を実感します。愛情をかけて育てたお蚕さまがはいてくれた繭から出来た糸、わずかな布きれ1枚、無駄にできなくなりました。
お昼ご飯は、永木さんの奥さま・愛子さんお手製のけんちん汁。みんなで食べればぽっかぽか、贅沢な一日でした。糸はこの先、里美さんが小高の植物で染め上げて、久米さんとともに織りあげます。