雨の土曜日11月14日、秋まつり以来ひさしぶりに訪れた小高は、朝晩めっきり寒くなっていました。
蚕部長の永木賢二郎さんが、秋のお蚕さまがひと段落してからほぼ毎日、繭から糸をとる「座繰り」をしていると聞き、初めて見せてもらいました。
まず、久米さんがいつも笑顔で言うところの「煮る」作業(あんなに可愛がって育てたのに…煮ちゃうんだ…なんていう私情は挟んではいけません)。100個ほどの繭を20分浸水し、沸騰したお湯の火を落とし、2分30秒。この時間が非常に大事!
煮た繭を、糸取り器にセット。単位は分かりませんがとにかく細い(としか言いようがない)1本の糸口が、鍋の中でクルクルと踊る繭の中から何十本も吸い上げられて、1本の太い(と言っても細い)糸になり始めます。写真をよーく見てください。クモの糸のような、雨のような細い糸が繭から出ているのが見えるでしょうか。
糸取り器をはじめ、座繰りに使う道具はすべて永木さんのお手製。
コタツのスイッチあり、〝円周率を計算した〟歯車あり、と日常のさまざまな部品を使って、実に精巧に作られた道具たちに、感嘆のため息がもれました。
約100個の繭からは1.2キロメートルほどの糸がとれるそうです。糸巻きにまかれた絹糸。精練するとより光沢が増すのですが、この時点でも美しい。
9月の末に繭かきをした時には触れなかったさなぎちゃん(見た目が…あんなに可愛かった蚕と違うもので)ですが、繭から出てきた姿を見たら、自然と「ありがとうね」と言いたくなりました。
織姫の里美さんは「丈夫な糸をはき出す蚕から、永遠のいのちをいただく」と言います。一連の作業を見ていると、その言葉を実感します。愛情をかけて育てたお蚕さまがはいてくれた繭から出来た糸、わずかな布きれ1枚、無駄にできなくなりました。
お昼ご飯は、永木さんの奥さま・愛子さんお手製のけんちん汁。みんなで食べればぽっかぽか、贅沢な一日でした。糸はこの先、里美さんが小高の植物で染め上げて、久米さんとともに織りあげます。