秋のお蚕さま成長録

2015年10月11日

秋深まるこの頃、小高の朝晩はあたたかな上着なしだと寒く感じるほど。

10月10日、3連休初日の浮船の里にはたくさんの来客がありました。中日の今日は雨のせいもあってか、静か―。秋のお蚕さまを育てた1カ月を振り返ってみます。

0905のかいこ

9月4日、4000頭の蚕たちがやってきました。体長は3~4㎝ほど、チョコレートの「小枝」のようです。

0913のかいこ

9月13日のかいこ。桑の葉を食べ続けて体長は倍に、ぷっくりと肥えています。このころになるとご飯は1日に4回ほど。朝、新鮮な桑の葉を刈りにゆき、たっぷりと与えます。〝さわさわさわさわ〟とも〝くしゅくしゅくしゅくしゅ〟ともつかない、五月雨のような音をさせて、蚕たちは黙々と桑を食みます。

 

すずなり再夜、桑の葉を敷いて帰ると…朝にはこのありさま。一枝にぷらーんぷらん、と蚕たちが鈴なりに。

そういえば、桑畑での桑刈り作業中にはこんな出会いもありました。

くわご再

くわご、という蚕の原種だそうです。お顔はなかなかこわいですが、動きはゆったり、可愛さは白いお蚕さまと変わりません。

 

9月17日、蚕たちは繭になりはじめました。その様子は9月18日のブログ【上蔟(じょうぞく)】に詳しく書いてあります。

完成再  9月20日、蚕たちは繭になっていました。まだ籠って間もない繭の中からは、〝かしゅかしゅ〟とも〝くちゅくちゅ〟ともつかない音が。糸を吐ききるまで、蚕は懸命に動きます。

まぶし再 9月26日、籠って1週間が経った繭を、蚕の部屋・蔟(まぶし)から外す【繭かき】の日が来ました。天井から吊っていた蔟を下ろします。

検品再

繭かきは、震災前まで養蚕業を営んでいた小高区・佐藤さんのお宅にお邪魔して行いました。

織姫の里美さんが繭かき前の検品。日に透かし、薄い繭やうまく成長できなかった蚕の繭をよけます。

賢二郎さん再

「マユクリン」という機械に蔟を押し進めると、一つ一つの仕切りから繭が外れて下に落ちてきます。操作するのは、浮船の里・蚕部長の永木賢二郎さん。9月中は、心の中で〝師匠〟と呼びながら、蚕のお世話をご一緒させてもらいました。

 

こうして無事に、秋のお蚕さまは3900個が繭になりました。去年6月、浮船の里で500頭を飼い始めたころには触れることもできなかった蚕たち。この秋は、知らずのうちにお世話に通っていました。シンプルなのです、蚕を育てるのって。彼らの食べる桑を切ってくる、与える、掃除する、観察、の繰り返し。でもちっとも飽きない。1日が驚くほどあっという間に過ぎてゆきます。

そしてとれた繭を前にした今は、どんなわずかな布切れも無駄にはできないとも思います。桑の葉だけを食べて育つ蚕が、口から糸を吐くという不思議。成長の過程を見続けてもなお、不思議は募るばかりで興味が尽きません。

来年3月には、春のお蚕さまに向けて桑畑の剪定を行うそう。すこぅしでも興味が湧いた方は来てみませんか。