今日という日

2022年7月8日

小高の街に、3年ぶりの開催に沸く野馬追の旗が掲げられました。

3週にわたる小高通いの、最終コーナーです。
1週目、お蚕さまのお世話。
2週目、上蔟。
今回は、繭かき。

美しい春繭ができそうだ、ということは先週お伝えしました。
さて、全部完成したかしら。。。

蚕小屋の天井に吊られていた蔟はすべておろされ、床に置かれたカンボジア方式の蚕ベッドが、静かにそこにありました。
乾燥した桑の葉の裏やベッドの枠に、できてる、できてる。
大小さまざまな、お蚕さんたちの努力の勲章が。
(左手前のほうにひょろっとある、細長い白いものの正体はのちほど)

こんなちっちゃい繭もありました。

 

蔟から繭を外す「繭かき」は、そのシーズンの集大成といえる作業です。
毎年大活躍の繭とり機「マユクリン」の稼働を前に、佐藤さんのおとうさんとおかあさんの指導のもと、繭チェック。


日の光に透かして、薄くて弱い繭や中でお蚕さまが力尽きた繭などは事前によけます。

ブイーーン!と勢いよく動き出した機械に蔟を送り込むと、一つずつになった繭がポンポンと飛び出してきます。


そして機械の反対側からは、羊毛のようなほわほわの塊。


繭づくりの時に蚕さんたちが体を固定させるために張り巡らせた最初の糸などが、こちらです。

無事に繭かきが済み、こちらも毎年楽しみなお茶っこの時間も終わって、浮船の里に戻ってきました。
ここからは良繭を100個ずつカウントしながら袋詰めする作業です。

できました、2022年の「マウント繭」(命名byはるかさん)!
カンボジア方式で営繭してくれた蚕さんたちの作品も、丁寧に取り出しました。

たくさんの美繭のなかで、やっぱりいる、いる。個性派の子たち。
こちらは最小サイズと最大サイズの比較。
「親繭」と呼ばれる、2頭の蚕が一緒に営繭したものや、今年のベスト・オブ・美繭(個人的感想)などを手のひらに乗せてみました。

今年できた春繭は、約4,500個。
桑の成長に気を揉んだり、暑さに参ったりしながらも、いい繭がたくさんとれました。
4週間蚕さんたちを守ってくれた蚕小屋をお掃除して、すっかりきれいにすると、あぁ、無事に終わったんだなとちょっとしんみり。
養蚕期間中に浮船の里を訪れてくださった方々、片付きましたよー!

さてさて、冒頭のカンボジア方式の蚕ベッドの写真で、左手前に写っていた細長い白いものは、、、

毎年かならずいる、繭にならない子。
新しい桑の葉をあげたら、そっと食んでいました。
いいよ、いいよ。
あなたにはあなたの「今日」がある。
この蚕さんにはこの蚕さんの人生が、わたしたちにもわたしたちの日々が、流れます。
今年の養蚕のお手伝いのごぼうびに、久米さんが、手作りのヘアゴムをくれました。
小高産の繭で織った生地から作った、この世に一つだけのゴム。
うれしいな。

桑畑は、秋の養蚕に向けて佐藤さんご夫妻が早速お手入れを始めてくださいました。
先週の上蔟のあとに、残っていた枝葉をぜんぶ落としてから1週間。
すでに新しい芽が出てきています。

浮船の里は、9月にふたたび秋のお蚕さまを迎えるまで、すこぅしゆっくりいたします。(ゆ)

 

 

後ろ髪

2022年7月1日

蚕さんたちが一生懸命に糸を吐いている木曜の朝は、美しい朝焼けでした。夢の中にいるひとも、起きて写真を撮っているひとも、まだ桑を食べている蚕さんも、もう真っ白い繭を作り上げた蚕さんも。みんなを等しく包み込む、小高の朝です。

 

蚕部屋も朝から30度近い熱気に包まれるなか、毎年恒例の光景が。

蔟から遠く離れた床で営繭。
蔟は蚕の重さで回転するので、もしかしたら振り落とされてそのままここで繭づくりに踏み切ったのかもしれません。

 

個室の外で営繭。
快適(はなず)な個室完備なのですが、型にはまりたくない蚕さんたちが集まったのかしら。
この場所だけが混んでいるので、なにか魅力があったのかな。

ほぼお部屋に入ったお蚕さんたちですが、まだ桑を食べているマイペース組もいます。

いいよ、いいよ。好きにやって。
最後には繭になるもんね。
思わずそんな言葉をかけたくなる姿。
蚕部屋に満ちる、糸を吐きだすショワショワショワショワという音も、あと2,3日で静かになるでしょう。

 

火曜から始まった繭づくり。
個体差があるので、2日遅れでスタートした蚕たちは、まだ薄い衣越しにその姿を見ることができます。

 

帰れないんだよなぁ。。。
いつまででも見ていられる、営繭の様子。
今年もお蚕さんたちに会えてよかった。
桑畑の佐藤さんご夫妻のお元気そうなお顔を見られてよかった。
後ろ髪ひかれながら、そろそろエンジンをかける時間になりました。

 

(ゆ)