前回訪れたのが6月だったから、
また季節の変わり目に小高に来たことになる。
青空がどこまでも広がる文句なしの青空で、
私はほっとしていた。
何しろ、私が小高に行くと
半端じゃない雨が降ることが多かったからだ。
今回ばかりは、雨だけは避けたかった。
10月15日、16日は小高の秋祭り。夫婦で参加させていただいた。
私にとってもそうだけれど、
それ以上に浮船の里の皆さんにとっても、
とても大切な秋祭りだったんじゃないかと思う。
小高に新しいことばがひとつ生まれた。
浮船の里の絹糸から作る製品ブランド「MIMORONE」
これが秋祭りでお披露目になった。
小高で育てたお蚕様の糸を小高の草木で染め上げて作った、
100%小高のブランドだ。
草木の繊細な色と、シルクの優しい手触り。
アクセサリーは秋祭りに来たみなさんを惹き付けて、
飛ぶように売れていった。
売れるのは楽しい。
このアクセサリーがどんどんいろんな人のところに行くのだから。
その先々を想像して、また楽しくなる。
少しずつ、世の中に「MIMORONE」の色が広がっていく。
「みもろ」とは大和ことばで「神様が見守る場所」の意味だそうだ。
小高の豊かな自然、糸を生み出すお蚕様、そして浮船の里の人たち。
きっと、神様が見守っている。
「ね」は「音」である。
音色ということばがあるように、色とりどりの糸のイメージと、
浮船の里に聞こえる独特の音たちをイメージした。
機織りの音、お蚕様の桑を食む音……。
確かに、この場所は色と音に溢れている。
MIMORONEの色が、小高から、みんなを幸せにする。
私たち夫婦もいつか、そんなものを作りたい。
そんな話を日に焼けた帰り道、話していたのでした。
参加させていただき、ありがとうございました。
(木田修作)
きのうの小高は雨。たぶん梅雨だから。そう思いたい。
とはいえ「私が小高に来たときの雨が降る率」は半端ない。
弱音を吐きそうになるが、 それでも笑顔で迎えてくれるここの人たちが本当に好きだ。ありがたい。
そのたびに、雨が降ろうが槍が降ろうが、またここに来ようと思う。
いきなり締めのような話になってしまったが、きのう浮船の里にお邪魔した。
いつぶりかと思って手帳のページを繰ってみると、3月以来だった(はず)。
その間に春がきて、もう夏になろうとしている。 変わるものもあれば、変わらないものもある。
さて、今回は機織りを体験したのだ。
いつもは遠巻きに眺めて「いいなぁ、手仕事の道具は」なんて思っていたのだけれど、
いざ座ってみると緊張感が違う。何かこう「ピン」とした気持ちになる。
私たちが到着したとき、経糸はもう張ってくださっていて、
緯糸を織って、コースターを作る作業を体験させていただいた。
糸と糸を組んで、一枚の布を作るというのは、 途方もない作業のように思えたのだけれど、
実際始めてみると慣れないながらも、目に見えて進んでいくから楽しい。
糸を通して、バッタン、バッタン。また糸を通してバッタン、バッタン。
その繰り返し。
作業は単純なのだけれど、 織っていくうちに複雑で繊細な表情を表していく。
最初は想像もつかなかった表情だ。それがまた驚きと感動に拍車をかける。
バッタン、バッタン。
そして、調子に乗っていると失敗する。雑になる。ほどいて、やり直し。
「ほどいてやり直せるよ」と島抜さん。
「絡まってやり直せなかったら、切っちゃえばいい」と久米さん。
やり直しのきくもの、ダメなら切っちゃえるものは、 世の中にあんまりないなぁ。
などと思いながら、バッタン、バッタン。
こうして、夫婦で9枚のコースターができた。
私たち夫婦は、いつか人が集まることができる場所を 自分たちで作りたいと思っている。
そのときに、このコースターでコーヒーを出したいと思った。
もう少し数が必要かもしれない。
木田修作
「糸を繰(く)る」という言葉を初めて聞きました。
糸は紡ぐものとばかり思っていました。
糸を紡いできた浮船の里は、いま糸を繰っています。
「坐繰り」と呼ばれる手法で作られた糸がこれです。
強く細い糸は「紡ぐ」のではなく、機械で「繰る」ことで出来上がるそうです。
そして、強く細い糸は機織り機を動かしました。
これまでの糸では、機織り機で織ることができませんでしたが、
「坐繰り」で作られた糸は、それを可能にしました。
京都から運ばれてきた明治時代の機織り機は、長い時を経て小高で動き出しています。
これまで、横糸だけが小高の糸でしたが、
これで縦も横も、小高の糸で織ることができるそうです。
ここで機織りを始めて、2年あまり。初めてのことです。
糸は小高の桑と藍で染め上げられました。
藍は青色に、桑は黄色に。
染め上げられた糸は、鮮やかだけれども、やさしい緑色のマフラーになる予定です。
縦糸も、横糸も、色も。
100パーセント小高のマフラーがもうすぐ出来上がりそうです。
(木田)
小高にお蚕様から作った真綿を桜で染めて、毎日毎日地道に紡いでやっと形にすることが出来ました。
改めて作り上げたものをじっくり見て、いろんな方にも見て頂いて、浮船の里で作っていきたいもののひとつに決まりました。
これはまだ完全なる天織ではないのですが、昨年大変お世話になった方々に差し上げることになりました。
やさしい草木染めの色合いに、やさしい手つむぎの糸がぴったりで、とても嬉しくなりました。
この純粋な感動をいつも胸に、糸をつむぐこと
その糸に小高の色をそっと添えて、来てくれる人を待っていたいです。
2日目、朝から桜染液を使ったストールの本染めをしていただきました。実は今回の日程に合わせて、生成り色のストールを織っていたのでそれを使いました。
染めるときには、きちんと同じ糸や布で試し染めします。今回は初めてなので、前日に試し染めもきっちり教えていただきました。
まず、染める布や糸は事前に水につけておき、しっかり浸水させます。うまく水を吸わないものは鍋で煮ます。
桜染は先媒染なので灰汁につけておき、それから染液と一緒に火にかけます。
だんだんと赤くなります。ストールも素敵な色に染まってきました。
きれいに染め上がったストールを優しく洗い、優しく絞り乾かします。
小高の桜で、小高の水で染めたこの色は、ここにしかない小高の色だと金田さんは言ってくださいました。
今年のお蚕様の糸で染めるまで、きちんと練習をして、小高の色を糸に宿らせることができるように練習したいと思います。