台風の進路を気にしながら、先週金曜の晩に小高へ向けて神奈川を出発しました。
秋のお蚕さま5,000頭が待つ浮船の里。5齢といって高校生の食欲に達した蚕たちは、日がな1日もしゃもしゃ桑の葉を、食べる、食べる、食べる―。
蚕部屋を開けるとむっと立ち込める青い香りを吸い込んで、おそうじとごはん(桑)やりに追われます。気づくと自分の袖口に蚕がくっついていたりして、なかなか気が抜けない。
そうして自宅に戻った久米さん、台所ですっとんきょうな声を上げました。笑いながら、エプロンのポッケに手を突っ込むと、1頭の蚕。どうやってポッケにおさまったのか、ともかくよくつぶれないでついてきたね。(あらゆる意味でご本人のほうが目立っていますが)お皿にちゃんと保護しました。
少しずつ景色の変わる小高。久米家から歩いて10秒ほどの堤防に出る手前のお宅が、取り壊されていました。浮船の里の後ろの田んぼには、ソーラーパネルを設置する計画があるそうです。そして遮るものがなにもない、広いひろい、小高駅前の陸橋下の田んぼにも。
日曜に葛尾村を抜けて田村市までドライブする途中にも、いたるところにパネルの広場がありました。ソーラーパネルをこんなに置いて、どこの誰に送電してるんだろう。このパネル、どのくらい使えて、寿命を終えた後はどうやって処理するんだろう。仕組みがそもそも分かっていないわたしには、これが〝安全〟で〝便利〟なものなのか、ということすら分かりません。ただ、美しくない、と思うだけ。
心やすまるのは、夕焼けや日の出といった自然の営みです。虫の声と風の吹く音、遠くに走る車。それしか聞こえない小高川の堤防で、蚊に刺されまくりながら写真を撮っていました。どうせなら日の出も見たいと久米さんに言うと、翌朝、村上海岸まで連れて行ってくれました。腰まで海に浸かりながら釣りをする人が2人。薄い雲の向こうから力強くのぼる太陽。いろんなものが明らかになる朝が来ました。
予定より成長の早いお蚕さまは、あと2,3日もすれば上蔟しそうな勢いです。
小高の初秋が過ぎてゆきます。(ゆ)