【上蔟】
じょうぞく
食桑をやめ営繭にかかろうとしている熟蚕を蔟 (まぶし) に移す作業。
養蚕労働のなかで最も多忙な作業の一つ。(出典;ブリタニカ国際大百科事典)
雨が続く9月中旬。
「上蔟 じょうぞく」の時期を迎えた浮き船の里は、少し緊張感が漂っていました。
9月4日にやってきたお蚕様は、まるまると成長し食欲旺盛。
桑の葉を与えても、あっと言う間に食べてしまいます。
その為、何度も桑の畑に新鮮な桑の葉をとりにいかなければなりません。
食べる量も増えれば、おトイレの量も増え、お掃除に追われます。
さらにこの時期、桑の葉を枝からはずす【条抜き】という作業も加わります。
こうして様々な作業をしているうちに、1日があっという間に終わります。
9月17日。お蚕様が桑の葉を食べるのをやめました。
ぐっと背中を反らせ、天を仰ぎます。いよいよ、上蔟の時期です。
お蚕様が繭を作る為の部屋、蔟 (まぶし)に
移していきます。
一頭ずつ、手づかみで移動させます。
4000ものお蚕様を移動させるのに3時間かかりました。
気温が低いのか、お蚕様の動きが鈍く部屋に入ろうとしません。
そこで石油ストーブ暖めた部屋に移動しました。すると・・・
のそのそと部屋にはいっていきました!
繭で完全にくるまる前、最後のおしっこを出します。
繭を汚さないよう、きちんとお尻を出してやります。
きれい好きですね。
上蔟が終わり、一安心。
外に出ると、雨が上がっていました。
(天地)
9月4日(金)、今年2回目のお蚕さまがやってきました。その数4000頭。
最初は指の関節2本分にも満たなかった蚕たち。1週間見ないうちに、関節3本分に成長していました!人間でいうと、高校生のような食べ盛り。というわけで、朝一番の仕事は、桑畑での桑刈り。昨日まで大雨に見舞われていた小高、今日はすっかり雨があがり、桑の葉のみずみずしい美しさに目を奪われました。イナゴもチキチキ鳴きながら数多飛び交い、ひと時童心にかえってみたり。
刈ってきた桑をさっそく蚕たちにあげました。まるで五月雨のような音なのです、蚕が桑の葉を食む音って。そして独特の青い匂いが立ち込めます。
高校生を立派に成人させるには、1日5回ほど、桑の葉がなくならないように与え続けなければいけません。編み物をしようかな、本を読もうかな、夕飯の準備もしたいな…思うだけで実際には手をつけられず、始終蚕の様子を気にしてしまいます。
成人式を終え、繭になる準備が出来た「ずーさま(不思議な呼び方ですね)」と呼ばれる状態になるまであと1週間ほどでしょうか。
今日も小高には、ゆったりとして豊かな時間が流れています。 (裕)
「糸を繰(く)る」という言葉を初めて聞きました。
糸は紡ぐものとばかり思っていました。
糸を紡いできた浮船の里は、いま糸を繰っています。
「坐繰り」と呼ばれる手法で作られた糸がこれです。
強く細い糸は「紡ぐ」のではなく、機械で「繰る」ことで出来上がるそうです。
そして、強く細い糸は機織り機を動かしました。
これまでの糸では、機織り機で織ることができませんでしたが、
「坐繰り」で作られた糸は、それを可能にしました。
京都から運ばれてきた明治時代の機織り機は、長い時を経て小高で動き出しています。
これまで、横糸だけが小高の糸でしたが、
これで縦も横も、小高の糸で織ることができるそうです。
ここで機織りを始めて、2年あまり。初めてのことです。
糸は小高の桑と藍で染め上げられました。
藍は青色に、桑は黄色に。
染め上げられた糸は、鮮やかだけれども、やさしい緑色のマフラーになる予定です。
縦糸も、横糸も、色も。
100パーセント小高のマフラーがもうすぐ出来上がりそうです。
(木田)